「自分の親には健康で長生きしてもらいたい」
「子供とコミュニケーションできない認知症になったら面倒見たくない」
後者の意見はかなりシビアだと思いますが、実際に認知症の父親を持つ私の率直な思いです。
私自身も40台に突入し両親も70台半ばとなりました。
母親の頭は若い頃と変わらずしっかりとしているのですが、父親は70歳を越えてからボケが始まり、現在は完全な認知症です。
父が認知症になってしまった理由は悲しきかな、よかれと思ってマンションを買ってあげた事が大きな原因という事が分かったのです。
車の通りが多い道路の近くに住むと認知症になりやすい
「自動車やバイクの往来が激しい道路の近くに住むと認知症になりやすい」
カナダのオンタリオ州公衆衛生研究所・カナダのトロント大学等が研究したこの結果が、世界五大医学雑誌「ランセット」に掲載されました。
同研究では
- 2001年の段階でオンタリオ州に5年以上住んでいる660万人を対象
(1996年以前からオンタリオ州に住んでいる660万人という事) - その660万人の内、2012年までの11年間にどれだけの人が認知症を発症したか
を調査したのです。
その11年間で約24万3000人が発症したのですが、次のようなデータが得られたのです。
- 200~300mの場所に住んでいる人は0%
- 100~200mの場所に住んでいる人は2%
- 50~100mの場所に住んでいる人は4%
- 50m未満の場所に住んでいる人は7%
これが何を表しているかというと
「幹線道路や高速道路から300メートル以上離れた場所に住んでいる人に比べて、どれだけ認知症を発症する割合が増えるか」
という事です。
幹線道路から200m以上の場所に住んでいれば、十分離れている人に比べても発症割合は変わらないが、200m未満となると発症リスクが増えるという事です。
50m未満になると7%も増加し、決して見過ごすわけにはいかないのです。
660万人もの人を対象としたデータゆえに、非常に信憑性の高い研究結果という事がいえます。
同研究結果の考察も「ランセット」には掲載されており、幹線道路の近くに住んだ人が認知症になりやすい原因を3点解説しているのです。
原因1:大気汚染
「幹線道路の近くは便利だけど空気が悪い」
誰もがそう思うでしょうが、一つ目の原因はまさにこの大気汚染です。
- 二酸化炭素をはじめとする窒素酸化物
- PM2.5
- タイヤが磨り減る際に発生する微粒子
といった汚染物質の量が車の通りが少ない地域の比ではありません。
これら有害物質が原因で
- 酸化ストレス
- 神経炎症
- 血液脳関門の損傷
を引き起こし、認知症の原因になっていると解説しているのです。
原因2:睡眠障害
「車の音で度々目が覚めてしまい、グッスリ眠った気がしない」
普段は閑静な場所に住んでいて不眠とは無縁の人も、たまの外泊等でこのような気持ちを体験した事があると思われます。
それだけ継続した睡眠は大事です。
幹線道路の近くに住むと、車やバイクの騒音で睡眠が断片化されて脳機能に悪影響を及ぼし、これが認知機能の低下につながるとランセットでは解説しているのです。
原因3:運動不足になる
運動が認知症予防になるのはよく知られていると思いますが、幹線道路には喧騒から離れて気分良く体を動かせる公園等はありません。
また、幹線道路の近くはお店が沢山あるので、買い物等で体を動かす機会も減ってしまいがちです。
このように運動不足が発生してしまう事が三つ目の原因だと指摘しているのです。
マンションを買ってあげた事が裏目に出た?
認知症になりやすいこれらの原因から、予防のためにはその逆をすれば良いという事が分かります。
つまり大きな道路から離れていて、運動等がしやすい環境がある場所に住めばよいのです。
運動する事をおっくうと思わないためには気軽に家の外に出られる事が大事なので、マンションよりも一軒家の方がより適しているのです。
冒頭で述べたように、私は父親にマンションを買ってあげました。
私自身がまだ賃貸住まいなのに…。
でも父が亡くなった後は自分が住めばいいので、そんなに気にせずに私名義で購入したのです。
それまで父は田舎に住んでいたのですが、高齢という事もあり病院等が充実している都会の方が便利という事で、都会に呼び寄せたのです。
幸いにも幹線道路沿いに安い中古マンションがあったので、それを買って住まわせたのです。
ただ、その歳でいきなり縁もゆかりも無い都会に出てきても友達もできるはずがなく、引きこもり状態だったわけで、まさに今回紹介した3つの原因が揃っていたのでした。